Swim Like Shinji:水泳動作の三原則:「重力」「座標」「支え」2 トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2018年10月10日

三原則の2番目が「座標」である。

2.座標
座標とは自分を中心にした三次元の空間座標のことである。立った姿勢では、進行方向をX軸、地面と平行で進行方向と垂直な軸をY軸、地面と垂直な方向をZ軸とする。
この座標を捕捉するのが位置覚である。位置覚は深部感覚の一つで,視角などに頼らずに,自分の身体の各部がどういう相対的な位置にあるかを判断する感覚をいう。

地面に垂直に立った姿勢では位置覚による座標が、絶対座標とほぼ同じになる。このためからだを動かしたい方向と実際の方向は一致する。

ところが上半身を前傾させると、脳が考える水平面と実際の水平面にずれが生じる。このため「からだに対して」水平に動作させようとしても、絶対的な水平面を意識してしまい動作がうまくできなくなる。ゴルフのスイングが難しい理由である。

○水泳の座標が難しくなる理由1:軸が混ざる
水泳の場合は横に伏して運動する。そうなると本来はXYZ軸が変わるはずであるが、陸上のXYZ軸に基づいた位置覚を引きずって動かすことがある。

簡単な例が、リカバリーの素振りである。陸上で上体を垂直にしたままリカバリーの手の動作を行うとき、からだは地面に垂直なので本来は上方向に泳ぐように動作をしなければならないが、前方向に泳ぐことを想定して手を動かそうとする。この結果肩の可動域を越えて手を動かすことになる。初心者では10人中9人がこの動かし方をする。

○水泳の座標が難しくなる理由2:軸が動く
もう一つの理由が、「頭の向きで軸が変わる」ことである。

位置覚は頭を中心に構成されるため、頭が傾くとXYZ軸がその分だけずれる。

  • 前を見ながら泳ぐ
  • 下半身が下がる
  • 息継ぎで頭が曲がる
  • 手を内側に入水することで頭がはじかれて外を向く

のようなときに、自分の考える座標と実際の座標に差が生じる。

自分では正しい位置に手を動かしているつもりでも、実際には異なるところに手があるケースはかなり多い。

○正しい座標を「補正力」で身につける
自分の考える(位置覚による)座標と、絶対的な座標を近づけることができれば正しい動作にしやすくなる。そのためには、

  • 自分の考える座標は絶対的な座標とは異なっていることを認める。
  • そのうえで補正をかける。

が必要である。

例えば入水位置が狭いと指摘されたのであれば、進行方向(時計盤でいえば12時の方向)に手を入水するのではなく。2時や10時の位置に入れる。

手を伸ばす位置が浅いと指摘されたのであれば、今よりも30cm深いところに手を伸ばす。

このようにして補正をかけることで、正しい状態に近づける。繰り返し練習すれば(1万回)、補正をかけた動作が組み込み関数になるので意識しないでも正しい動作ができるようになる。

具体的には以下のように場所を決める。

  • 水平面の動作は、水面上に時計盤をイメージして短針の位置で場所を決める。
  • 垂直面の動作は、水面からの距離で場所を決める。
  • 進行方向をからだの軸と一致させ、立位のときのZ軸にする。立位のときのX軸にしない。

○自分の座標を絶対座標にする
主にプールで泳ぐのであれば上記の方法だけで良いが、オープンウォータースイムを行う場合はもう一段階ステップアップする必要がある。

プールで静かな水面を基準に動作を行うことに慣れてしまうと、水面が大きく変わるオープンウォータースイムで混乱する。そこで自分のからだを絶対座標化して、自分のからだの動きの少ない部位を基点した距離や角度を使うようにする。以下が例である。

  • 手を入水する場所は頭頂部の横延長線上
  • 手を伸ばす方向は伸ばした手が視界に入る方向
  • リカバリーは背中の面を越えない。水が被さってきたときはリカバリーせずに待つ。

こうすればどのようにラフな海でも、落ち着いて泳げるようになる。

竹内慎司TI代表のブログSwim Like Shinjiはこちら→