水泳上達のための7つのレッスン レッスン6:身体全体をシンクロさせる TIスイム創設者 テリー・ラクリン
2018年8月10日
従来の泳法では、手は水をかくためのもので、足はキックをするものというように、手と足の動きは別々のものと考えられてきました。そして胴体はというと、引きずらなければならない邪魔なお荷物です。
人間の動作の根本的な原理は、身体を、ばらばらの部位としてではなく、統合されたシステムとして使うことです。これは陸上と同様、水中でも言えることです。
当然のことですが、最も基本的なスイミングの考え方の1つは、水をかくこととキックすることが最も重要な動作であるということです。
- その重要な動作は、元々足を地面から足を上げて泳ぐという「危険な」試みから始まりました。私の場合は、7~8歳の時にロングアイランド湾に係留しているいかだまでの10ヤードを全速力で泳いだ時でした。私はいかだにたどり着くまで、それが唯一頭を水の上に保つ方法であるかのように、ただ必死に手足をバタつかせていました。
- 私が初めて受けたレッスンでは、インストラクターは赤十字のマニュアルに沿って指導していました。そのマニュアルでは、クロールの技術を「腕を回転させ、足を激しくける」と表現していました。現在の赤十字マニュアルでは、姿勢が大事であることは表面上書かれていますが、ほとんどのインストラクターは今でも手と足の動きに重点を置いています。
- パドル、ブイ、ボード、フィンなどを沢山プールサイドに運んでくる人を見たことがありませんか?それを見ると、手のみ、足のみでの練習は欠かせないように見受けられます。指導者のいるチーム練習では、週に何時間も手/足のみの練習をするので、多くのトライアスリートやラップスイマーたちは、それに従っているようです。
これは、バランスを習得しているスイマーがほとんどいないためだと思われます。バランスができていないスイマーは、ブイを使うことで楽に泳げるからです。(しかしこれは一時的です。)そして、従来のスイミングを推奨している人は、キックボードを使うことで、キックが強く、上手くなると信じています。しかし、キックボードを使って鍛えた足も重力にはかないません。
手/足に重点を置いたスイミングは、時間の無駄だけでなく、次のような問題も引き起こします。
- バランスとストリーミング技術の向上の妨げとなる。
- エネルギーの節約や抵抗の軽減ができず、無駄な体力を使うことになる。
- 崩れた体勢でのスイミングに慣れてしまい、生態力学的システムとしての身体の使い方を習得する妨げとなる。
どんな運動競技においても、体幹を軸に動作がスムーズに流れる時が一番効果的であることが示されています。
- どんなボール(テニス、ゴルフ、野球のボール等)を投げたり打ったりする時、下半身から生成される力を運ぶのは主に腕です。
- 腕で物を持ち上げる時、反動や惰性を使わず、腰と脚から持ち上げるようにすると、さらに重いものを持ち上げることができます。
- 腕を固定した状態で歩いたり走ったりしようとすると、とても不自然でぎこちなく感じます。なので、ランナーは足だけのトレーニングをしません。では、なぜスイミングでは、足だけのトレーニングをするのでしょうか?
人間のスイマーの場合、最初はたったの3%の効率しかないので、動作をできるだけ効率よく行うために、可能な限りのことを行う必要があります。
身体で泳ぎを覚える
3つ目の要素として私たちが紹介するのは、促進力です。バランス、安定、ストリームラインを最初に紹介するのは、推進力のスキルを習得するためにそれらが必要だからです。
TIの推進力のスキルは2つの原理から成っています。2つともエネルギーを節約することで大きなメリットを得ることができます。 (効率が3%から6%に向上した後でも同じです。).
楽にパワーを生み出す:筋肉を使ってパワーを生成するのはエネルギーを消費します。しかし、体重、重力、浮力を組み合わせて生み出す力はエネルギーをそれほど必要としません。TIでは、有効なエネルギーとパワーを利用し、それから筋肉の力をそれに合わせる方法を指導します。
内から外に泳ぐ:パワーとリズムは、胴体から手足に流します。腕と脚の筋肉は簡単に疲労します。しかし、体幹の筋肉ははるかに強く、比較的疲れにくくできています。TIドリルでは、腕と脚の動きを体幹と連動させます。
アンダースイッチのドリルは、ストリームラインと推進力のスキルを同時に定着させることができるので、効率の要素のシームレスな統合を促進します。さらに、水中で手を前に運ぶことによって、次の利点を生み出します。
- 左右のストロークでストリームラインが強化されます。
- 重力の影響を減らして、微妙なバランスを保てます。
- 抵抗とそれを避ける意識が高まります。
主なフォーカルポイント
- スケートの姿勢で、バランスと体の線を確認します。
- 水中で手を前に伸ばし、身体の他の部分を腕に合わせて一直線に伸ばして滑るように進みます。
- 手を前に伸ばした状態を保ち、腰の捻りと重力を使って腕と体を前に滑らせます。
- 最後はスケートの姿勢に戻ります。バランスと体の線を再確認します。
私たちが指導するアンダースケートには、断続的なものと律動的なものの2種類があります。重要な細部を確認するには、断続的なアンダースケートを繰り返し行い、ストロークにつなげるための練習として律動的なアンダースケートを行います。そして、律動的なアンダースケートとストロークを連動して新しいスキルを仕上げます。
スイングスイッチでは、焦点をさらに重点的に推進力に置きます。最適なタイミングで、進行方向への体重移動によって生成されるエネルギーとパワーを使います。スイングスイッチは、手(と前腕の一部)は水中に残したまま行います。これによって、手と前腕をリラックスさせやすくなり、手が肘より早く前に出過ぎるのを防ぎます。
主なフォーカルポイント
- スケートの姿勢で、バランスと体の線を確認する。
- 腕を外側に回しながら前に運びます。反対側は、手から足まで伸ばし、滑らかで安定した状態を保ちます。
- 前に運ぶ腕を上げて一旦止め、手を下げて体重移動を始め、前に伸ばした反対側の手より前に入水します。
- 各サイクルをスケートの姿勢で終了します。バランスと体の線を再確認します。
アンダースイッチと同様、初めは断続的に行い、次に律動的に、最後はスイングとストロークを連動させます。それに慣れたら、指先が水面を滑るように腕を前に運び泳ぎます。