Swim Like Shinji:[NMP]神経動作プログラミングとは トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2018年7月15日

運動学習メソッドとしてNMP(Neural Motion Programming)を確立するため、考えがまとまった部分から文字化することにした。

○最小運動単位
運動における全ての姿勢や動作は脳が指令を出す。

 a) からだのどの部位が
 b) どのタイミングで
 c1) どのような形にするのか(姿勢)
 c2) どのような動きにするのか(動作)

これが最小運動単位になる。
一つの姿勢や動作は、この最小運動単位を複数組み合わせることで実施される。

○インプットによる条件判断
運動には、環境や状況に応じて動きを変化させる場合がある。例えば、

  • 相手の動きに合わせて自分の動きを変える(武道、格闘技など)
  • 物体の動きに合わせて自分の動きを変える(球技全般)
  • 物体が置かれた環境などに合わせて自分の動きを変える(ゴルフ、ボウリング)
  • 環境に合わせて自分の動きを変える(水泳)

これらは主に視覚により情報を入手する。水泳は触覚や平衡感覚など他の知覚を使用する点でユニークである。

これら運動を変えるための情報を「インプット」と定義する。球技では役割が変わるとインプットの種類も変わってくる(例:ピッチャーとバッターと野手)。

得たい結果が得られるように動作を行うのが目的であり、この目的を達成するために必要最小限のインプットがあれば良い。インプットが多いほど条件判断が多くなり、得たい結果を素早く得ることができなくなる(と考えられる)。

○動作をプログラムに見立てる=アルゴリズム化
誰でも短期間で運動できるようにするためには、

  • 運動をできるだけ小さい単位に分解して、
  • 必要なインプットと変えるべき条件を明確にして、
  • 運動のステップを記憶しやすくする

必要がある。

そこで一連の動作をプログラムに見立てて、「アルゴリズム」と呼ぶ。
アルゴリズムには複数の運動が存在し、インプットによる条件判断も含まれる。
おおまかに分類すると、水泳には約20のアルゴリズムが存在する。

これらを暗記して、からだ対して実行命令できるようになれば、誰でもラクにきれいに泳げるようになるのである。

○組み込み関数の存在:運動神経の善し悪し
アルゴリズムの中の運動の一部は、これまでの人生経験において既知のものがあり、これらはステップを一つずつ追わなくても結果を得ることができる。

これを「組み込み関数」と呼ぶ。

運動神経の良い人とは、この組み込み関数を多く持っている人のことである。その人にとって新しいスポーツであっても、その動きを見ながら自分の組み込み関数を呼び出すことにより、見よう見まねでそこそこできるようになってしまう。

ただしこのような人は、組み込み関数を使っているので脳がどのように命令したかを意識していない。そこで人に教えるときには動作を示したり、擬態語(シュッとかバシッとか)や意味不明語(しっかり、きちんと、ちょっと、少し)を使ったりして説明しようとする。教わる方が組み込み関数を持っていればそれでも通じるが、組み込み関数を持っていない(運動神経の悪い人)にはちんぷんかんぷんになる。

子供の頃から水泳を習っていて、水泳について組み込み関数を多く持っている競泳あがりのコーチが、泳げない大人に対して教えづらいのはこれが理由である。

○動作を「暗記する」必要性
レッスンでアルゴリズムができるようになっても、その後の自主練習でうまく行かないことがほとんどである。これはアルゴリズムを正しく行っていない(=バグがある)のが理由である。そしてアルゴリズムを正しく行えない最大の理由が「暗記できていない」からである。

からだを動かす以上脳がその手順を覚えなければならない。「からだが覚える」という表現があるが、これは意味をなさない。からだは勝手に動かないからである。正確には、「脳が手順を伝えなくても得たい結果が得られる」、すなわち組み込み関数にすることである。

一つのアルゴリズム全体が組み込み関数となるためには、1万回の動作が必要と言われている(1万時間とも言われる)。水泳の主な動き全て(20アルゴリズム)が意識しないでできるようになるには、20万回の動作が必要になるのだろう。25m20ストロークなら25万m=250キロ=200日(1回1.25キロとして)と大したことはない。朝晩に素振りをすればその半分で済む。ポイントはアルゴリズムを暗記することを目的にして練習することである。

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