水泳上達のための7つのレッスン レッスン4:トータルイマージョン独習シリーズ:バランス TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2018年5月10日

私が40歳の時、ビル・ブーマーさんという、洞察力に長けた、型破りなコーチに、バランスの概念を教わりました。初めてバランスのドリルをした時(現在私たちが指導しているドリルほど明確ではありませんでしたが)、私は最初の30秒でそれの持つ変革の可能性を感じました。いつも重く感じていた私の脚が、とても軽く、キックさえほとんど必要ないと感じるほどでした。

大学を卒業してからの20年間は時々泳いでいただけですが、その後はずっと熱心にスイミングを続けています。バランスの概念を知ってからは、スイミングがずっと楽になり、何よりも純粋にスイミングが楽しくなりました。スイミングを始めて最初の25年間では考えもしなかったことです。

効率的に泳ぐためには、陸上哺乳類として生まれ持ったバランス感覚や、本能的にとる姿勢と動作を打ち消す必要があります。 陸上に住む生物として、人間は人生のほとんどの時間、重力を地面から縦に感じて生活しています。しかし、水中では重力を横になった状態で感じます。陸上では、立った状態でバランスを保っていますが、水中では水面からぶら下がった状態になり、バランスが不安定になります。

横になって泳ぐと、重力により、重い下半身が沈み、肺がある上半身が浮きます。人間の身体は、水の中では足が下がって胸が高くなるのが自然です。これによって、大きな抵抗が生まれます。特に初心者に言えるのですが、足が沈むこと自体は命に関わることではないにもかかわらず、その感覚が脳をパニックモードにしてしまうのです。

人間は本能的にその「沈む感覚」に動揺してしまい、前に進むどころか、その場で必死にバタバタともがいてしまうのです。ある程度泳げる人が97%のエネルギーを無駄にしているとしたら、慌ててしまう初心者スイマーは、99%無駄にしていると言えます。つまり、マラソンのエリートランナーでも、スイミングに関して初心者であれば、1本泳いだだけでも疲れ果ててしまうこともあるのです。

バランスのドリルを何度か行うだけで、楽にバランスが取れるようになり、多くのエネルギーを節約することができます。身体だけでなく、精神的にもかなり楽になります。

  • 自分の身体をコントロールして楽に泳げることで、良い結果が生まれ、前向きになれます。
  • リラックスし、リズミカルな反復運動をマインドフルネス(フォーカルポイント)をと取り入れて行うことでα波が発生し、脳が新しいことを修得するのに最適な状態になります。俗にいうスーパーラーニングゾーンです。
  • スイミングを、動きながら行う瞑想として練習することで、満足度の高い滑らかな状態を体験することができます。このTI泳法から得られる満足度が、多く生徒たちのスイミングへの情熱に火をつけるのです。

この技術的基礎と精神的満足度の組み合わせを得る為に、経験のあるスイマーに対してでも、すべてのTIの指導は「バランス」から始めます。 TIのバランスドリルは、表面的には単純に見えるかもしれませんが、姿勢を変えるためだけのものではありません。泳ぎのメカニズムに対するスイマーの考え方も根本的に変わります。


スーパーマングライドを練習することによって、2つの最も重要な身体的スキルが習得できます。

1. 身を任せて安定する:人間の身体は水よりも密度が高いので、上のビデオを観て分かるように、自然に浮いた状態で、身体の95%が水面下に沈みます。人間の恐怖感を誘発する本能が、重力に逆らって水面に出ようとしますが、それは不可能なので、もがくことはエネルギーの無駄にすぎません。スーパーマングライドを習得し、重力に身を任せると、水が体を支えてくれることを体感できます。

2. 身体を伸ばす:身体を真っすぐ伸ばすことで、水面に出る面積が最大になり、水の移動が改善され、水面に近い場所での安定感が得られます。(抵抗も減らすことができます。) 

1m進むだけでももがいていた人が、ストロークやキックなしで楽に前に進めるようになる(3回のグライドだけでプールの端から端まで移動できる)ことで、精神的苦痛から解放され、やる気も出てくるのです。泳ぐことに全く恐怖感はなくなっている人でも、まるで飛んでいるかのように感じることに驚くのではないでしょうか。

正面倒れこみドリルは、TIのミニドリルの1つです。ミニドリルは、メインのドリルの重要な要素に焦点を当てるために、最初の数秒または数メートルのみを使って簡潔に行います。正面倒れこみドリルでは、頭と背骨のアライメントを保つために必要な体幹を認識します。 足が沈んでもアライメントを保つことで、足をバタつかせて反応するという、生まれ持った本能を断つことができます。

スーパーマングライドからさらに伸びることで、頭が水に支えられている状態をより意識することができます。腕を身体の脇に置き、頭を身体から分離することで、頭から背骨にかけてのアライメントと首の力を完全に抜いているかをより意識することができます。水のクッションに支えられていると想像してください。

スーパーマングライドにストロークを加えることで、新しい思考と認識を確認することができます。スーパーマングライドで数秒グライドし、ひとつのスキルまたは感覚(力を抜いた首、2本のレール、水に支えられている感覚、足が引っ張られる感覚など)に集中します。そして、4~6回ストロークして、ストロークしている間とグライドしている間の感覚を比べます。ミニスキルを1つずつ身体に覚え込ませ、一体化させるための方法を、私たちは指導してます。