スイム 30×100m 2分30秒サークル
キャンプが終わり、午前中はランとスイム、午後はゴルフでもしようかと思っていたら、お客様のMMさんよりインターバル練習100m30本の誘いを受けた。
私は強烈なアンチインターバル派であり悩んだが、通常のインターバル練習を発展させるチャンスと思い参加することにした。
○水泳のインターバル練習とは
水泳でいうインターバル練習は、決めた時間でスタートすることを何本か繰り返す練習である。この決めた時間を「サークル」と呼ぶ。
今回は他に参加される方のスピードを考慮して、100m2分30秒で30本泳ぐことにした。
○私がインターバル練習に反対する理由
・前提となる心拍数の増加が水泳では見られない
インターバル練習の目的は、運動直後に心拍数が上がる特性を利用して、短い休憩時間で繰り返し運動することで持久力を増加させることである。
ところが水泳において心拍数が逐次計測できるようになり、運動直後に心拍数は上昇しないことが明らかになった(グアムキャンプ参加者実測値に基づく)。
つまりインターバル練習の前提が崩れているのである。
・速く泳ぐためのプロセスが提示されていない
スタート時間を固定することで何が起きるか。
−遅く泳ぐと休み時間が短くなる
−速く泳ぐと休み時間が長くなる
この2つだけである。速く泳げば長く休めるという報酬はあるものの、具体的に速く泳ぐにはどうすればよいかというプロセスの提案はない。
ややもすると「根性」とか「頑張る」とか再現不可能な非技術論になってしまう。
・運営者側の論理である
インターバル練習はグループスイムで多く導入されている。
あるコーチは「この方が多くの人数を回せる」とまで言った。
お客様に対して失礼ではないか。猿回しではない。
多数のお客様でも個別のレベルを考慮しながら上達させられるようにするのが付加価値である。
・達成感がクセモノ
集団で行うことで、連帯感や一体感が生まれて頑張れるという意見がある。
また達成感が味わえるという意見もある。
結構なことである。それが速さに直結する明確な論理があれば。
達成感は得られても、技術的には何一つ得るものがない。
○テンポピラミッドを取り入れる
30本を単純に泳ぐだけでは意味がないので、10×3として10段階のテンポピラミッドをインターバル練習に取り入れた。
最初はテンポ1.15秒でスタートして、3本泳いだらテンポを0.05秒遅くする。1.30秒で3本泳いだら今度は0.05秒速くして、テンポ1.00秒で終了する。
テンポが遅くなる局面ではストローク数をできるだけ減らす。
テンポが速くなる局面ではストローク数をできるだけ維持する。
・テンポ1.15秒→1.30秒
1本目のストローク数は行き43帰り45であった。泳ぎ慣れてきた2本目からはスカリングによるプルとプッシュ、入水てこ、肘てこなど加速の道具をフルに使った。
テンポを0.05秒遅くする毎にストローク数は1から2減らすことができ、テンポ1.30秒の段階で行き38帰り40まで減少した。
タイムは1分44秒で、テンポが遅くなるにつれてタイムも遅くなった。ストローク数は減っているのでタイムはもうちょっと速いままかと思ったが、2本目よりも4秒近く落ちて1分49秒であった。
・テンポ1.25秒→1.00秒
ピラミッドの効果が出たのがテンポを速くした局面である。
テンポを0.05秒速くしたときに、前のタイムより3秒速くなった。
ここから先は同じテンポの3本ともタイムが速くなるだけでなく、3本の中でも次第にタイムが速くなるディセンディング状態であった。
最後の30本目はテンポ1.00秒で1分32秒、ベストよりも速いペースで終えることができた。最初のペースより12%速いペースである。
・検討時間の締め切りがあるのがよい
3000mを泳いでベストタイムより速いペースが出せたので、インターバル練習の効果はあったと評価できる。
時間が経ったら強制的にスタートするというのは、次に何をするのかを考える時間に限りがあることを意味する。このためあれこれ考えず、一つの道具に集中することができる。
また今回初めてピラミッドで同テンポにおいて複数本を泳いだが、一つの道具に集中して失敗した場合に、同じテンポで他の道具を使ってみることができるのは非常に良かった。
インターバル・トレーニングに良さを見いだすことがなかったが、実際にやってみると良い面もあることがわかった。ただしそれはテンポピラミッドやペーススイムと組み合わせて、別のタスクを設定した場合に限る。
インターバル・トレーニングの良さを見いだすことができたので、MMさんには大いに感謝したい。
○お勧めのインターバル・トレーニング
- 100m以上であれば20秒〜30秒休憩できるように時間をセットする。
- 速く泳いで休み時間を増やそうとしない。
- テンポピラミッドを必ず取り入れる。
- できれば同一テンポで2本か3本泳ぐ。
- ストローク数を数えて、テンポが遅くなる局面ではストローク数を減らす。
- テンポが速くなる局面ではストローク数の増加を抑える。
以上がグループ練習でも使用できるやり方である。
休み時間を確保するために、普段よりも遅めのサークルのグループに入った方が、結果的に速く泳げるかもしれない。
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