日本での滞在が長くなるにつれて、普段の生活と同じ環境でトレーニングする必要が生じてきた。近くのスポーツクラブで都度払いという仕組みがあったので、週に1〜2回利用している。
地元のプールで泳ぐときにはコースをシェアすることはほとんどないので、物理的に人のからだと接触することはない。ところが日本のプールは数人と一緒に泳ぐことになるので、泳ぎながらからだが接触する機会が増える。さらにコース幅が狭いので、となりのコースの人とも接触することになる。
そこで久しぶりに思い出したのが、他人の手の硬さである。水上にしても、水中にしても、もの凄く固い。見た目リラックスしているように見える人のリカバリーでも、偶然触るとものすごく固くて驚くことがある。
瞑想しながら泳いでいると、前の人に追いついて足を触ってしまうことがある。このときも足が硬いことに気づく。
プライベートワークショップではドライランドに時間をかけているが、リカバリーで「腕を持ち上げる」と意識した瞬間に肩から先、全ての部分が緊張する。この緊張はリカバリーの間続き、入水のときも緊張しているので肘が自由落下しない。
全身が完全にゆるんだ「くらげ浮き」では、みなさん30秒以上姿勢を保つことができる。それが泳ぎ出すとすぐに苦しくなるのは、筋肉の緊張が原因であると考えられる。
つまり筋肉の緊張を取り除けば、苦しくなくなるだけでなく泳ぎのコントロールもできるようになり、泳ぎが上手くなるのである。
●ゆるめ方
筋肉の緊張を除くということは、ゆるめることである。しかし筋肉を緊張させることはできても、筋肉をゆるめることは難しい。
瞬間的にゆるめるためには、関節に注目する。肩、肘、手首の関節ごとに、ゆるめるように指示すればその関節につながっている筋肉をゆるめることができる。これがゆるめ方の基本である。
次にどの程度ゆるめるかを決める必要がある。肩、肘、手首いずれも、手や腕の形を維持する必要があるため、その形を維持するのに最低限の緊張が必要である。初心者の場合この程度がわからないので、全部緊張か全部ゆるいかの二択になっている。
- 腕の形を維持するためには、上腕を持ち上げるのに必要な肩の緊張を残す。
- 肘を伸ばしておくには、力を入れて伸ばした状態からゆるめた程度の緊張を肘に残す。
- 手と前腕を水上で一直線にするには、手の甲を持ち上げたり、指の向きを変えて形を作ったら形が維持できる程度に手首をゆるめる。水中で一直線にする場合は、水の抵抗を受けても手首が曲がらない程度に緊張する。
●ゆるめる時間
ゆるめる時間はどのくらいか。これは逆に「緊張して締める」時間を最小限にして、その残り全てがゆるめる時間になる。
具体的にはテンポトレーナー・プロの「ピッ」という音が聞こえる間だけ力を入れる。時間としては0.1秒程度である。テンポ1.2秒で泳いでいるのであれば、0.1秒だけ力を入れて1.1秒はゆるめることになる。つまりほとんどゆるんでいるのである。
●ゆるめる練習
ゆるめ方がうまくなるには、ドリル練習が適している。
まず姿勢を維持するために動かさない関節(スーパーマングライドの手、スケーティングの畳んだ手など)に注目し、上記のようにゆるめた上で形を維持するために最低限の緊張を加える。
次に動作が伴うドリルで、力を入れる瞬間を決めて他はゆるめてみる。テンポトレーナーを使って、音が鳴る間だけ力を入れるのがよい。
最後にクロールを泳いで、ゆるめる方を意識するときと、締める方を意識するときに分ける。
●速く泳ぐときにも有効
速く泳ぎたいときこそ、ゆるめる練習が有効である。
手をゆるめることで水中で素早く動かし、加速を上げることができる。
また疲れにくくなることで速度劣化を抑えることができる。
速いテンポ、速いペースほどゆるめる場所や時間を拡大する練習が必要になる。
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