健康と活力のためのスイミング:癌を機会と捉える TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2017年5月10日
アンビー・バーフットさんは1968年、Wesleyan大学在学中にボストンマラソンで優勝しました。ビル・ロジャーズさんは、その時のチームメイトであり、ルームメートでもありました。バーフットさんは同年ボストンマラソンの後に福岡マラソンに出場し、自己ベストの2:14:28.8を出しました。そしてそのタイムは、アメリカ記録まで後1秒というところでした。

バーフットさんは、ランニングブームの年代記編者となり、雑誌「ランナーズ ワールド」の編集長として長年にわたり務め、その後も総合監修者として席を置いていました。2006年にバーフットさんが、ランニング人生をさらに楽しむためにと、私の所にTIの指導を受けにきました。それ以来、彼とは親交を深めてきました。

バーフットさんがどれだけ走ることが好きかというと、最近彼は54回目のマンチェスターロードレース(約7.6q)を走ったのです。それも17歳から70歳まで毎年連続参加という記録的なものです。54年間毎年マンチェスターを走ったことによって、年齢がパフォーマンスにどう影響するかという珍しい記録を彼は残してくれました。彼のメールでは、それを面白おかしく、そして率直に書いています。

「マンチェスターのコースはこの54年間まったく変わっていないので、憂鬱になるような自分のパフォーマンスの正確なデータを持っています。私のここでのベストタイムは、22:22です。 現在のタイムは自慢にもなりませんが、37:12で、ベストタイムに比べて約67%遅くなっています。1年で1.24%遅くなっている計算になります。ただ、直線ラインで遅くなっているわけではありません。40年以上もの間、私の減速率は0.9%でしたが、ここ最近の7年間は、3%ほどです。
私のトレーニングはここ40年ほど一貫していて、インターバルトレーニングとたまに出る5Kレースを入れて、大体週に25〜30マイル(40〜50q)走り、ジムで数時間トレーニングします。」

バーフットさんのメッセージを読んで、自分のパフォーマンスがどのように低下しているかを知りたくなりました。そして、1650ヤード(1500m)のクロールをパフォーマンスの指標として選びました。これを選んだ理由は、正確な計測ができる最も長い距離であること、そして、スイミングの標準レース距離の中で、時間的に最もマンチェスターロードレースに近いことです。

1650ヤードの私のベストタイムは、20歳の時に出した18:02です。次の1650ヤードレースは来月です。間違いなく、今までで一番遅いレースとなるでしょう。今の私のトレーニングを考えて、多分26分位になると思います。 ベストタイムより45%遅くなることになり、平均で1年にぴったり1%ずつ低下 する計算です。

バーフットさんのように、私の低下も一定していませんが、他に類似する点はあまり見当たりません。

  • 20歳から50歳の間は、10%減速しました。1年で平均0.28%の減速です。
  • 55歳から64歳では、さらに21%減速し、年に2.3%の計算になります。
  • 最近8か月では、ガン治療の影響もあって、さらに14%減速しました。

私の20歳からの減速率は、バーフットさんのそれと比べるとかなり少ないですが、最近の減速率は急激です。そして、バーフットさんは定期的なトレーニングを中断することなく、54年続けてマンチェスターレースに参加している一方、私は20歳でスイミングを止め、37歳の時に復帰しています。1650ヤードのレースには、20歳から41歳までの21年間出ていません。ですが、長い中断があったにもかかわらず、その期間のベストタイムと比べて、50秒(4%)しか遅くなっていません。

その理由の1つとして、バーフットさんは、大学在学中に既にアメリカ記録に極めて近いタイムを出していたエリート選手でした。私は、20歳にスイミングを止めるまで、スイミングが得意とは言えず、不安定で、標準以下の選手でした。しかし、スイミングを中断している17年間、私は指導者として、非常に貴重な技術についての洞察を得ることができました。これは、選手として活動していたら得ることができなかったと思います。

TIと出会ったのは、その17年間の最後の方でした。私は技術へのアプローチとして、船の形を意識するようにし、自分自身のフォームを変えていきました。それと同時に、TIの講習者に教えるための人間モルモットならぬ魚モルモット役を務めていました。

病気を機会と捉える
しかし、私のスイミング人生で最も価値のある洞察は、過去10年間に得ることとなりました。それは、私が健康面で大きな問題に直面していた時です。ありがたいことに、私は50代半ばまでは健康に恵まれていました。55歳と56歳にアメリカ記録を破ってしばらくして、私はリウマチ性多発筋痛症を患ってしまったのです。 自己免疫疾患のひとつで、倦怠感や炎症を伴います。そのため、私のスピードは急激に低下しました。

この期間、私はほとんどプールでのレースには参加しませんでしたが、トレーニングは続けていました。病気になる数年前と比べると、トレーニングは時間的にも効率的にも減りましたが、その状況に甘んじることはありませんでした。セットを泳ぐ時のタイムはかなり遅くなりましたが、制限された能力からスピードと持久力をどうにか導き出し、今までに感じたことのない鋭い集中力を養いました。

2015年の3月に、9年ぶりに1650ヤードを泳ぎました。私のタイムは、今までで最も遅い23:10で、55歳の時より3分20秒も遅くなりました。 それでも、フォーカスとレースプランの実行という面においては、私にとって最高のレースのひとつとなりました。来月も同じように泳げればと期待しています。

十代の時は、人間として可能な限り一所懸命トレーニングに励んでいましたが、結果が散々のレースも多くありました。60代になってからは、賢く効率的なレースを常にこなしてきました。 客観的に測定できる外因性のものではなく、本質的なもの、経験の質が私の基本的な尺度となりました。そしてそれが、私の指導方法です。

このブログを書くのを一休みして、昼間プールに行きました。泳いでる間に、その時その時の代謝能力とは全く別に、パフォーマンス改善のための数多くの機会について考えました。

一度の100ヤードでも、パフォーマンスを改善または低下する小さなスキルは数えきれないほどあります。TIが推奨する神経志向の方法でトレーニングを行えば、1650ヤード(1500m)のパフォーマンスともなると、複数の小さな問題を解決し、それを身につけることが可能です。

1つの例は、ランニングやサイクリングでの呼吸は、自然と起こるもので、ほとんど意識しません。一方スイミングでは、習得するのが一番難しいスキルと言えます。息継ぎがうまくできることで、ストローク効率の大きな改善につながります。

他の例はターンです。スイミングでは、25ヤード/mまたは15〜18ストローク毎に方向転換しなくてはなりません。ターンが効率良くできるのとできないのでは、格段の差が生じます。そして、ターンの際は、泳いでいる時の息継ぎのパターンが4〜5秒中断することになるので、呼吸のコントロールも必要になります。ランナーやサイクリストが20秒毎に同じだけ息を止める必要があると想像してみてください。

加齢や能力の低下を機会として捉え、スキルを改善することで、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えることができます。

歳を重ねるごとに、代謝能力は少しずつ低下します。私は代謝能力が急速に著しく低下した経験が2度あります。50代後半に自己免疫障害を患った時と、つい最近ガン治療を受けた時です。

2回とも私は、トレーニングをどのように工夫するかを考えるいい機会と捉えました。レースのタイムは大幅に落ちると思いますが、マスターズでのスイミングは、できる限り続けていきます。なぜなら、レースの申込書に記入することで,トレーニングの目的が定まるからです。

私のトレーニングとレースについて、またブログで報告させていただきます。

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