Swim Like Shinji:【プライベートWS】泳ぐとは? トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2017年4月10日
これまでの指導の総集編として、プライベートワークショップで説明した内容について紹介する。

プライベートワークショップは通常のワークショップに比べて時間のコントロールがしやすいので、私の水泳に対する知見を説明する場として活用している。お客様は水泳を上手になるためにわざわざ松戸まで足を運んでくださるので、できるだけ丁寧に説明して、脳から上達して頂くようにしている。

今回のテーマは「泳ぐとは?」である。そもそも泳ぐとは何であろうか。泳ぐとは、

  1. 水中で(浮いた状態で)
  2. 前に(方向)
  3. 進む(動く)

ということである。泳ぐためには、上記の123全てを考慮して脳が手足に何をするか命令する必要がある。

陸上に置き換えて考える
人間は陸上で生活しているので、手足に命令する内容を決めるにあたってまず陸上に置き換えて考える。

  1. 陸上で
  2. 前に
  3. 進む

とした場合、何をするであろうか。お客様5人に聞いたところ「足を動かす」が主な答えであった。ところがじっくり考えてみると、足を動かす前に「からだを前傾する」という動作があることに気がつく。前傾しないで足を前に出すのは、コントで演じられる泥棒だけである。

それではからだを前傾するのはなぜか。重心を前に移動するためである。前傾して重心を前に移動し、一番不安定になる状態で足を一歩前に出すことで人間は前に進むのである。これは歩くときも走るときも同じである。従って、「前に進む」ために「重心を移動している」ことがわかる。

次に陸上では一歩足を出すのであるが、そのときには足で地面を押して、地面からの摩擦で得られる抗力で足が前に出る。つまり「前に進む」ために、「足で地面を後ろに押す」ことを行っている。

このように、

  • からだを前傾して(あるいは手を前に出して)重心を前に移動する
  • 足で地面を後ろで押す

という2つの動作を行うことで、人間は陸上で前に進んでいるのである。

水中でやるべきこと
人間が前に進む原理はわかったので、次に水中の場合について考える。

○重心を前に移動する
水中で重心を前に移動するには以下の方法がある。

  • からだを前傾する。伸ばした手やからだを水に委ねることで前傾できる。
  • 伸ばす手の位置を下げる。重心は変わらないという説もあるが、これまでの指導経験ではほぼ確実(95%以上)に下半身が浮く。
  • 入水した手に体重をかける。入水する手は肘が曲がった状態で、入水する角度は鋭角である必要がある。
  • リカバリーで重心より後ろに手があるときは素早く動かす。重心より前に手があるときはゆっくり動かす。

○水を後ろに押す
地面の摩擦の代わりに水の抵抗があり、摩擦の抗力の代わりに水の抗力を使う。従って水を後ろに押すことで前に進む。水を後ろに押す「力」は以下のような方法で得られる。

  • 手の投影面積を増やす。水の抵抗は投影面積に比例する。
  • 手を素早く動かす。一定速度に到達するまでの時間が短いほど加速が大きくなり、押す力も大きくなる。
  • 水を押す時間(または距離)を延ばす。上記2つの条件を満たしたうえで、時間や距離を伸ばせば力は増える。

○陸上と水中の違いを考える
最後に陸上と水中の違いを考える。

  • 水の抵抗は空気の840倍である。水中で前に進むためには、抵抗を減らすことを第一に考えるべきである。抵抗は投影面積に比例する。
  • 水は流体である。地面では摩擦により力が得られるが、水の場合素早く動かすことにより力が得られる。

「泳ぐ」ためには、以上のような点を脳が理解したうえで、手足に対してどのように動くか指令を出さなければならない。

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