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Swim Like Shinji:オリンピック男子1500m自由形決勝を分析する トータル・イマージョン代表 竹内慎司2016年9月10日 |
ブラジルのリオデジャネイロで開催されたオリンピックが無事終了した。競泳では現役復帰したフェルプス選手が相変わらずの強さを見せる一方で、10代や20代前半の若手選手も数多く表彰台に立ち、世代交代を印象づけた。
○2016年の自由形のトレンド 1)斜め入水の一般化 しかし実際には入水前に加速を上げている。これは日本選手権出場レベルの選手を直接観察したときにも感じていたのだが、水中の手のプルからプッシュにかけてを力強く行うために、同じタイミングで行われる入水動作をてこにしているであろう。 2)スイッチタイミングの左右の違い 一方息継ぎをしないときにはリアクワドラントとなり、入水するときに反対の手はプッシュフェーズに入っている。この結果左右のリズムが異なる。これを「ローピングテクニック」と呼び、ローピングするスイマーとして代表的なのはフェルプス選手だが、現在では決勝に残るほぼ全ての選手がこの技術を取り入れている。 2008年頃までは泳ぎ方が個性的な選手が数多く存在したが、現在では泳ぎ方に大きな違いは見られない。平泳ぎもそうであるが、速く泳ぐための方法が収束に向かっている印象を受ける。バタフライ、背泳ぎはまだ個性が見受けられる点、今後の流れが楽しみである。 ○1500m自由形決勝を分析する 以下は上位3選手の結果である。最初のラップに対して平均のラップがどの程度落ちたかを示す劣化率を比べる(表の下から二段目)と、優勝したパルトリニエリ選手が6.2%で最も小さい。決勝で出場した全選手の中でも最小である。 最初のラップはスタートを含み速いため、次のラップと平均ラップを比較した結果が表の最下段である。いずれも非常に小さい数字であり、第2ラップのタイムを基本ペースとして泳いでいることがわかる。 1位と2位の違いについてみると、最初のラップでは0.07秒とほぼ同じであるが、第2ラップで0.36秒の差がついた。上記のように第2ラップは基本ペースとして考えられるので、このペースの差の積み重ねがタイムの差につながっている。表には掲載していないが、最後の200mではイェーガー選手はパルトリニエリ選手より1秒速く泳いでいるが、それまでの差が埋めることができなかった。 3選手のラップタイムの推移を示したものが下のグラフである。パルトリニエリ選手は前半ペースを守り後半乱れたが、一方のイェーガー選手は前半遅めで後半ペースを上げている。ペースの差は0.6秒程度であり1ストローク程度しか変わらないが、トップレベルでは戦略の立て方により勝負が決まることがわかる。 ○孫選手の結果を分析する 第1ラップの劣化率を見ると、これまでに比べて9.6%と非常に悪い。また第2ラップの劣化率も3.5%であり、これまでのマイナスや1%台に比べて見劣りする。また孫選手はラスト100mの爆発的な加速が印象に残っているが、今回は28.88秒と第1ラップよりも遅く、これもタイムが遅くなった原因と考えられる。 ラップごとの推移を見ると、過去2大会では一定しているが、今回は第4ラップから落ち始め、750mを境としてさらに1秒近く遅くなっている。この結果過去2大会に比べて1.2秒以上ペースが遅くなり、結果として30秒遅くなった。 200m、400mでは素晴らしい泳ぎをしているので、加速を生み出す力はこれまでと変わらないのであろう。ただしこれまで見たように1500mではペースを維持することが戦略上非常に重要であるので、伸び盛りのイタリア勢や底力のあるアメリカ勢に対抗して復活できるかどうかは、中距離と長距離のどちらに焦点を当てるべきかという決断にかかっている。 ○我々一般スイマーが学べること
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