Swim Like Shinji:インターバル練習の活用  トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2016年6月10日
スイム 5050yds
心拍モニターを導入してから様々な仮説を検証することができて、クロールの完成形練習の幅が大きく拡がっている。なかでも長い距離を速く泳ぐための練習方法については、かなり詳細に組み立てられるようになった。

効率の良い泳ぎをフォームで作ることは当然であるが、それに加えて高い運動強度(心拍数)をペースを損なわずに長時間維持することも、長い距離を速く泳ぐためには必要である。これまでわかったことは、

  • 続けて泳いだ場合、心拍数が上がるのに時間がかかる。速く泳ぐための練習帯である「最大心拍数の80%」に達するには500ヤード泳ぐ必要がある(初回セット。2回目からは半分)。
  • 陸上とは異なり、水泳の場合泳ぎを止めた瞬間から心拍数が下がり始める。下がる割合は30秒で10%、45秒で15%である。

これらの情報に基づいて、きつくない運動で心拍数を恒常的に上げる練習を考えるため、ペースの計測からゼロベースで見直した。

○2つのペースの計測
現時点の泳力や心肺機能を使いながら、劣化を最小限にするペースを「基本ペース」と呼ぶことにする。また目標の距離をラクに完泳することのできるペースを「リラックスペース」と呼ぶことにする。これに目標の距離を目標のタイムで泳ぐ「目標ペース」を加えた3種類のペースが、ペース練習において必要となる。

・基本ペースの計測
基本ペースを決めるにあたって、以下を検討した。

  • 目標の距離の50%以上を合計で泳ぐ。
  • できるだけ速い状態を作るために、何回かに分ける。
  • 心拍数が高い状態を維持するために、200yds以上泳ぐ必要がある。
  • 心拍数の低下を防ぎながら速いペースを維持するために、30秒の休憩は必要である。
  • 複数回を連続して泳いだときの変動幅は劣化率程度であるべき。

これらより泳ぐ距離は300ヤード×3として、休憩30秒、変動幅は15秒とした。劣化を考えたなかでは最も速いスピードの維持を意識しながら泳いだ。

測定の結果3本の変動幅は9秒(4%)、平均のラップペースは21.3秒となった。

・リラックスペースの計測
リラックスペースは、目標の距離をラクに泳ぐなかでは最も速いスピードである。テンポを速めに保ちながら水中動作をゆるめるか、テンポを遅くして加速は維持することでこのペースを実現する。

泳ぐ距離は200ヤード×2として、休憩30秒とした。ラクに泳ぐということで劣化はしないと考え、劣化率は考慮しなかった。

測定の結果平均のラップペースは22.5秒、切り上げて23秒とした。

計測結果より、ラップあたりのペースの違いは以下の通りとなる。

  1. 目標ペース:20秒
  2. 基本ペース:21秒
  3. リラックスペース:23秒

○インターバル練習へのペースの導入
水泳のインターバル練習は、泳ぐ時間+休憩時間を定めて複数回泳ぐ。1回あたりの強度を上げることで、全体の距離を続けて泳ぐときよりも強度を上がるとされる。

今回はまずリラックスペースでインターバル練習を行った。リラックスペースを少し上回るペースを考えて泳ぐ時間は3分、休憩時間は30秒として3分30秒のインターバルで10本泳いだ。以下のグラフの後半の山10個分が相当する。

各セットの平均心拍数は148で、運動強度は86%であった。これは1000ヤードを続けて泳いだときのテンポ1.15秒の心拍数より高く、17ストローク維持の心拍数より低い程度である。トータルで泳ぐ距離は倍でありながら、泳いでいるときのきつさは一番ラクであったことを考えると、リラックスペースで繰り返し泳ぐ効果は高い。

興味深いのがこの後に続けた5×100(基本ペース+30秒インターバル)である。ペースが2秒速くなったにもかかわらず、平均心拍数は148と同じであった。最高心拍数も153〜157で200のインターバルとほとんど変わらない。

これまで21秒ペースで泳ぐときの平均心拍数は155を超え、最高心拍数は168まで達していた。これまでに比べると、きつくないのにスピードは速い印象であった。効率の良いスピードアップを実現することができた。

以下が考察である。

  • インターバル練習では劣化しないペースで泳ぐ。劣化しては心拍数も変わるため意味がない。
  • 心拍数が10%ダウンする程度の休憩時間(ラップペース程度)にする。
  • 1回に泳ぐ距離は心拍数が十分あがる200を最低単位とする。
  • 合計距離は目標距離を上回るようにする。
  • インターバル練習のあとに基本ペースの練習でラクにスピードアップできることを確認する。

基本ペースとリラックスペースを、今後の練習メニューの組み立てに導入する。

練習後の気分:10(得たい結果が得られた)

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