泳ぐより歩く方が速い海を泳ぐ トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2016年4月10日
2015年3月にグアムでスピードアップ・キャンプを実施しました。今回はメインイベントとして、タモン湾を横断する4km泳を久しぶりに行いました。見た目は静かですが、これまでにないタフな横断泳になりました。

○久しぶりの横断泳

スピードアップ・キャンプは文字通り速く泳ぐ技術を身につけるためのキャンプです。これまではシーズン前にスイムの課題を解決したいトライアスリートの方が多く参加されていたのですが、最近は夏のキャンプに毎年参加して力を付けてきて、いよいよスピードアップにチャレンジという方も増えてきました。健康のために大人になってから水泳を始めたミドルやシニアの方たちが、1500mのタイムトライアルではトライアスリート顔負けのタイムを出せるようになっており、スピードアップキャンプの効果が現れているようです。

折り返し地点のPacific Star Hotel(写真中央のホテル)

スピードアップキャンプは少人数であることから、タモン湾を横断する4km泳を何度か試みています。起点となるウェスティンホテルから、目標となるPacific Star Hotelまで海岸沿いに2km、ホテルの前のビーチで折り返して往復4kmのコースです。

ところがタモン湾は基本的に浅く、潮位が高めであっても水深が40cmくらいしかないところがあります。浅い水深とサンゴに挟まれて泳ぐのはとても大変です。入水する手を深い位置に伸ばすTIスイムのスタイルで泳ぐと手が傷だらけになります。潮位を見ながら日時を決めますが、これまでに何回となく途中で引き返したことがありました。4kmできたのは過去に2回しかありません。

今回も潮位表に基づいて日程を決め、しかも通常午前中のオープンウォータースイムセッションを午後に回して、4km泳に私とお客様4人がチャレンジしました。

○100mを5分かけて泳ぐ

最初の700mは水深も問題なく、風もそれほどなく気持ち良く泳ぐことができました。浅くて過去何度も挫折した難関の教会前(約1km)も、水深40cmで何とか泳ぐことができました。過去に比べてサンゴが低く感じましたが、環境汚染の影響でしょうか。

ところが1kmを過ぎたあたりから、明らかに進みが悪くなりました。私はお客様の目標となる180cmのブイをからだにつなげて泳いでいるので、からだが後ろにぐいぐい引っ張られるようです。見た目は静かな海なのですが、潮の流れが強烈な向かいになったのです。泳いでいるお客様の現在位置を確認するために立ってみると、そのまま流されるほどの強さです。エンドレスプールなら全開から8割ぐらいのスピードでしょうか。海は透明度が高く水深が浅いので、自分がどの程度進んでいるかよくわかります。下に見えるナマコやヒトデの位置が全く変わらず、悲しくなってきました。

泳いだコース(右上からスタート:全行程約4km)

最初は昨年身につけた向かい潮のギアを使って、ラクに速いテンポで泳いでみました。ところがほとんど前に進みません。そこで入水する手を加速して、深く入れることにより極端な前傾姿勢を作り、アウトスイープを使ったキャッチで水のひっかかりを最大限にしました。イメージとしては、ザイルを使って垂直に山を登っている感じです。手を深く突っ込み、その勢いで30cmずつからだが前に動くようにしました。

これまでは500mぐらいで潮の流れが変わったのですが、今回は折り返し地点に近づくにつれてさらに潮の流れが強くなりました。結局100mあたり5分以上かけて泳いでいました。これは25mを1分15秒、1mを3秒かけて前に進んでいたことになるので、1ストロークで30cm進むイメージは本当だったことになります。

折り返し地点までやっとの思いで到着して後ろを見たら、20m後ろからYさんが近づいて来ました。「私と同じスピード?」と思って驚いたのですが、「泳ぐと後ろに下がるから歩いてきた。帰りが楽しみだからがんばって歩いた。」とのこと。泳ぐよりも歩く方が速い海は初めての経験でした。

○100mを1分以内でラクに泳ぐ

行きがこれだけ苦しんだ分、帰りは異常な速さでした。1ストロークで2mは進む感じでしたが、実際100mを1分ペースで泳いでいました。何もしなくても前に進みます。みなさんスケーティングしたり、上向いて寝ていたり、片手のドリルをしてみたりといろいろ楽しんだようです。

追い潮では手に水が当たる感覚が鋭敏になることが発見できたので、私はキャッチ−プル−プッシュ−フィニッシュの手の動きに集中して泳ぎました。正しい手のひらの向きと肘の角度にすると、押せる水の量が確実に増えることがわかり、収穫がありました。

○黒エイ、白エイと一緒に泳ぐチャンス

毎回キャンプではエイに遭遇します。タモン湾東には黒エイが、西には白エイが生息しており、今回は1番−2番ブイの間を泳いでいるときに、魚を多数ひきつれた巨大な黒エイが下を通りました。その姿はまさに映画スター・ウォーズのダース・ベイダーで、あのテーマ音楽が頭の中を流れ、泳ぎが止まりました。

エイは攻撃されると尾の付け根にある太い針を刺してくるので、大変危険です。足が底に着かないように浮いた姿勢で通り過ぎるのを待ちます。今回は2番ブイで折り返したらまた遭遇したのでパニックしましたが、向こうはのんきに通り過ぎました。

カラフルな熱帯魚だけでなく、エイに遭遇できるのもグアム・キャンプの醍醐味です。次回はオープンウォータースイムが初めての方のコースもあるキャンプを7月に開催します。グアムの海は透明度が高く、波がなく静かで、疲れたら立てる理想的な環境です。そして今回より夕方にセッションを行うので、芸術的に美しいサンセット・スイムが楽しめます。満足度が飛躍的に高まったスイムキャンプ、ぜひお試しください。

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