ストロークドリル : パーソナルヒストリー パート3 TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2016年1月10日
前回のストロークドリル:パーソナルヒストリーパート2 で、ストロークドリルに対する私の見解を方向付けた、人生を変えるような3つの経験をしたこと、そして、それらをどのようにトータルイマージョンの泳法に取り入れたかを書きました。
  1. ビル・ブーマーさんによる私の最初のバランスドリル 10分もしない内に、私が30年以上抱えていた思いが覆されてしまいました。それは、「自分の足は重く、それはどうすることもできない。」という思いです。正しい方法で正しくドリルを行うことによる、変革の力に気付かされました。それと同時に、私は改善の道を進むこととなりました。自分はスイマーとして随分前に完成していると思っていたのですが、まだまだ習うことが沢山あることに気付かされたのです。それから27年後、今でもなお学び続けています。
  2. 新しいスイマーには新しいドリルが必要  幼少期から水泳を始めた若い選手の指導に20年近く使用し、効果も見られた従来のドリルは、成人してから始めたスイマーには全く役に立ちませんでした。生徒達は疲れて、やる気を失せているようでした。なので私達は、彼らの問題(沈むこと、息苦しくなることへの恐怖感)に対処するために、ストロークドリルの全く新しいメニューを作らなくてはなりませんでした。そして、彼らが水に慣れてから、初めて技術を教えることができたのです。
  3. 魔法の船体 水中での人間の身体の動きに意識を向けたドリルを私達が指導するようになった時、何十年もの経験があるコーチを含む私達が目にした進歩は、目を見張るものでした。初心者たちだけでなく、経験のあるスイマーにも同様に効果が見られたのです。それ以来、TIコーチの指導とドリルは、手や足を使う推進力に焦点を当てる前に、体幹の安定、バランス、伸長、一直線にすることに、まず焦点を当てるようになりました。

これらの洞察を得てから20年以上の間、私達は何千人という参加者を指導しながら数え切れないほどの経験を積み、ストロークドリルの価値を極大化し、ストローク全体に活かすための次の3つの更に深い洞察にたどり着きました。

1) マインドフルを習慣にするためのストロークドリル
14歳から20歳の間に私が所属していたスイムチームの練習方法で私が身に付けたのは、他のスイマーも経験していたような、堂々巡りの機械的またはオートパイロットのような泳ぎでした。初めてバランスドリル習い、頭から背骨にかけて一直線にすることに意識を向けることを指導されてから、一度たりともストロークを無駄にしない泳ぎへと移行していきました。一回一回のストロークをはっきりとした目的を意識しながら行うようになったのです。

成人の初心者を教え始めると同時に、私はヨガのクラスも取り始めました。そしてヨガは私のスイミングに大きな影響を与えました。ヨガでは、太陽礼拝や戦士のポーズで数を数えることはほとんどありませんが、その瞬間その瞬間で常に集中しています。 そして、私も自由形を泳いでいる時に、ストロークの重要な体勢や瞬間を、ヨガのポーズと同じように、分析していたのです。私達は、一瞬一瞬のドリルまたはフォーカルポイントを考え出し、ヨガのように意識しながら練習しました。その結果、ストローク全体において、さらに精度の高い意識を生み出しました。

それ以来ドリル(近年では「リハーサル」でも)は、スイマーに明確で特定な意識を持って泳ぐ習慣を付けさせるために、最重要なものとなりました。実際に、新しい生徒たちに指導する時は、各セットの最後に、動きの質と意識の質の両方を評価するように指示しています。

2) 極端に短い距離での練習
TIができてまだ間もない頃は、私達は反射的に、ドリルで生徒に25ヤードまたは25メートル泳ぐように指示していました。そして、プールの反対側で生徒を待ち、フィードバックや次の指示を出していました。ラップ毎に単にフィードバックを与えたり、間違いを直すことは、TIのドリルへの取り組みを異常なものにしていました。 多くの場合、私は個人的にスイマーがラップを繰り返すのを観察し、毎回修正はせず、明らかに良くない動きの習慣を頭に刻み込んでおくようにしました。

しかし、ドリルでの評価は、ほとんどの場合、最初の10ヤード程度で下すことができていることに、私達は直ぐに気がつきました。10ヤード以降では、初めの10ヤードで行ったことが衰えるに過ぎないことが多いのです。その理由は次の2つです。

  1. 約10秒過ぎる頃には、スイマーの目標は、スキルの改善から単に反対側にたどり着くことに変わってしまう。
  2. 体力的、精神的、または神経的に疲労してしまう。高い集中力を要する新しい動作を練習しているので、プールの端から端まで(45〜60秒かかる場合もある)その集中力を保つこと、新しいスキルの感覚を神経に覚えこませることは困難である。

そこで、私達はドリルの大部分を変更して、6〜8mまたは10秒以内を4〜8回繰り返すようにしました。キックすることが疲れてきたり、ドリルが単にキックの練習になってきたら、そこで止め、呼吸と精神を整ます。

3) 姿勢、動作、タイミングを息継ぎから切り離す
初心者やスイミングが苦手な人にとって、圧倒的に多い問題は息継ぎです。息継ぎは、姿勢、動作、タイミングとは全く異なるスキルです。従って、私達は、まず姿勢、動作、タイミングを徹底的に教えてから、息継ぎの指導に入ります。水中で楽に身体のコントロールが保てるようになってからの方が、息継ぎのスキルを習得するのがかなり容易になるからです。

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