Swim Like Shinji:1日に5レース、8.35kmを泳ぐ トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2015年12月10日
シンガポールのFish Tangマスターコーチに招待され、シンガポールと台湾をツアーした。ツアーではワークショップやプライベート・レッスン、コーチ研修に加えて、Tangコーチが経営するFish Like International, Ltd.が主催する、Swim World Expo 2015というイベントに参加した。

同イベントは3.8km, 1.9km, 1500m, 750m, 400mのレースで構成されており、半日かけて行われる。それぞれの距離はトライアスロンの距離別のスイムパートと同じである。シンガポールのTIスイマーは8割以上がトライアスリートであり、平均年齢も30代後半と若い。1日に5レースも泳ぐので最初は驚いたが、このような客層だからこそ成り立つ企画なのだと関心した。ちなみに日本は7割がフィットネススイマー、平均年齢は50代後半である。

招待スイマーということで「当然」5レース全部に出場しなければならない。今シーズンはこれまでで最も泳ぎ込んでおり、1日4km〜5kmを週3日、8kmも2週間に1度は泳いでた。そこで距離については心配せず、ペースの維持を課題に直前まで練習した。目標は100m1分40秒である。

○レース当日朝
到着翌日より2日間で2つのワークショップ、しかも久しぶりの20人を超える参加者で疲れたままレース当日を迎える。この間プールには20分程度入っただけ。スカリングの手の動きやパワー・フィニッシュの使い方を復習して終わる。

午前4時起床。レースの間に休憩が入るので、無理に食べることはせずサンドイッチとおにぎりで朝食とした。Tangコーチの車で会場に入る。ボートクラブの施設を借りているので、ビーチではなくボートの上げ下ろしする場所から海に入って海中スタートであることが判明。ゴールはこの坂を上るのだが、傾斜がきついうえに苔ですべるので要注意(実際に滑って転んだ)。

今回のイベントは私がフィーチャーされているので、例の入水時の写真(通称トライアングル・アーム)を使った横断幕が張られていた。少々照れくさい。出会う人の多くは私の存在に気がつかなかったが、シンガポールや台湾のコーチに挨拶すると他の人も私がわかったようで、写真撮影やサインが始まる。中年オヤジが肥満解消に始めた水泳でこのようになるのはとても良い気分。

○第1レース:3.8km
2周するので、1周目はコースを理解するため景色や潮の流れを確認しながら泳ぐ。最初はバトル状態であったが、200mも泳ぐとばらけて泳ぎやすくなる。熱海、香港と単独泳が続いたので、レースのペースとの違いにとまどいながら速いテンポ(1.0秒)を維持する。

ブイとブイの最短距離を泳ぐように意識したが、途中のブイから300度回転で次のブイまで行くことがわからず、270度回転して直進したのでかなりコースを外れた。気づいたのが15m程度過ぎてからだったので、コースに戻るのに同じ程度要した。

波はなく静かであったが、潮の流れは確実にある。波がない分だけまっすぐに泳いでいるつもりであるが、潮が横から流れているときは注意する必要がある。サンフランシスコ湾では慣れているものの、新しい場所では泳ぐ角度を変えるための目印がわからず方向修正に苦労した。

○第2レース:1.9km
3.8kmの最終泳者がゴールしてすぐに、次の1.9kmレースのブリーフィングが始まり、その後レースになる。3.8kmを速いペースで泳いで疲れていたので、食欲がなく水分補給だけに留めたのが後でダメージとなる。

1周だけなのでハイペースで泳いだつもりであったが、3.8kmよりもペースが落ちていてがっかり。泳ぎ終わった段階でかなり疲労していたが、なんとかバナナだけ食べた。

○第3レース:1.5km

かなり疲れた状態で迎えた第3レースは、オリンピックディスタンスでもありこのレースのみ参加する人も多かった。スタート後バトル状態が5分程度続き、ペースも速かった。

中盤を終えた頃から強烈な空腹感と脱力感が襲ってきた。明らかにガス欠である。長距離のレースを複数体験することが初めてであり、エネルギー補給配分を完全に間違えた。5レース全体で泳ぐ時間は3時間に満たないが、スピードが速いことや、合間に休憩があることから全体のエネルギー消費量はかなり多くなる。フルマラソン並みの栄養補給配分を考えるべきであった。気力だけでなんとかゴールするが、ペースは劇的に遅かった。

○第4レース:750m
第3レース終了直後に、手持ちの食べ物全てを急いで食べる。予備用のエネルギーバーも食べた。この結果脳にブドウ糖が回り出し、750mはハイペースで終えることができた。1500mよりも6%速いペースであったが、それでも100mペースで2分は切ることができなかった。

○第5レース:400m
第3レースのゴール直前の泳ぎを撮影してくれた方がいて、見せてもらった。テンポは速いが完全に空回りしていた。

そこで実験的に、テンポ1.20秒でどこまでスピードアップできるか実験してみた。水中の手の動きの距離を増やすとともに、水を確実に捉えて後方まで押し切る。半分までコーチTangと一緒で、彼は1.20秒で泳いでいたので丁度良いペースメーカーとなってくれた。

結果として、最後のレースで疲れていたわりには750mより速いペースで泳ぐことができた。

昼食後に30分間、「オープンウォーターを効率泳ぐための7つのセンサー」についてプレゼンテーションを行った。台湾のコーチに見本として泳いでもらい、その泳ぎを見ながら説明した。

○総括
これまで非常に長い距離をラクに完泳するための練習を続けてきたが、速いペースを維持する練習を取り入れる段階に来た。2月からスタートする。

また1時間以上のレースでは、過剰と思える程度のエネルギーを補給しておかないとガス欠になる。腹持ちの良い食べ物と、スポット的に補給するブドウ糖の組み合わせを補給戦略に取り入れる。

5レースの完泳人数は45名。完泳者は私のトライアングル・アームをあしらったポロシャツと名前入りの盾をもらうことができる。ロットネストではもらえなかったので、とても良い気分であった。

○死ぬまで一度は行かなければならないマリーナ・ベイ・サンズ
(出所) Wikipedia
レース後、コーチ研修やプライベート・レッスンを経てマリーナ・ベイ・サンズに宿泊した。3つのビルの屋上をまたがる世界一有名なプールである。

プールの外側はオーバーフローするようになっていて縁がない。これをインファイナイト形式と呼ぶが、まるでプールの水が流れ落ちるように見える。

夜の景色も素晴らしかったが、朝はコースロープが張られ、100mのコースを一気に泳ぐことができて楽しかった。太陽が上がるに従って変わるビルの色もきれいであった。やはりスイマーなら、死ぬまで一度は体験しなければならないプールであろう。

なおプールの味は普通であった。過去に体験したプールで最も美味なのはリッツ・カールトン東京のプールである。


(出所) Wikipedia

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