意識を高めるストロークドリル TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2015年10月10日
キャッツキル・レクレーションセンター
(ニューヨーク州アークヴィル)

6月6日の土曜日、私はニューヨーク州アークヴィルにあるキャッツキル・レクレーションセンターの1周年祝いの席に招待されました。センターは、私のニューパルツの自宅から車で75分のキャッツキル山中に位置します。センター長であるベッキー・マニングさんは、Eメールの招待状でセンターのことを「辺ぴな所にある素晴らしい施設」と表現していました。そして、まさしく素晴らしい所でした。25ヤードが6レーンあり、レッスンのためのゼロエントリーエリア(ビーチのように、徐々に深くなっている場所)があるこのプールは、とても魅力的でよく整備されています。そして、プールから望める山を背に、とても素晴らしい環境にあります。

私のワークショップは、TIの超効率的なクロールの技術を説明した短いビデオとスライドショーを観ていただいた後、ゲストコーチのマスターズスイミングセッションを行うというものでした。スライドショーでは、多くの方々が強い関心を示し、良い質問をしてくださいました。その後、私達はプールに移動しました。

スライドショーで、私はTI泳法の基盤は「認知的困難」であると話しました。私達は、機械的な繰り返しとは全く正反対である、脳を存分に使う課題を学習と訓練の両方に作ります。

これは、習得や改善を早めるだけでなく、スイミングをとても楽しいものにしてくれます。神経科学者によると、マインドフルな動作は、年をとっても精神的に元気であり続けるために、最も有効な手段のひとつであるのことです。アルツハイマーに罹るリスクをも低下する可能性があります。

キャッツキル・レクレーションセンターの美しいプール

「今」を泳ぐ
練習を始めるに際し、ペースクロックは使わないことを伝えました。ペースクロックを使うと、脳への要求が低下するというのが理由の1つです。そして、ペースクロックを使わないことで、これまでのマスターズの練習で慣れているパターン−結果を生み出す工程よりも、結果を重視する−を打破することができるからです。練習方法を未知の領域へ少し送り込むだけで、脳は活性化するのです。

タイムを計る代わりに、ストローク1回1回を意識して行うストロークカウントとフォーカルポイントの2種類の課題を出しました。まず、この後にやる練習のための基準を設定するために、ストロークを数えながら50ヤード泳いでもらいました。私は30+〜50+ストロークまたは15〜25SPLになると予想しました。

50ヤード泳いだ後、参加者にストローク数を聞いたところ、3分の2の人が数え忘れたか、途中で判らなくなったとのことでした。結局全員が、このさほど難しくない課題‐泳ぎながら考える−をこなすまでに、3回行わなくてはなりませんでした。今までもクリニックやゲストコーチとして、TIの経験のない同レベルのスイマーに同じ指示を出して何度も同じ経験をしているので、私はさほど驚きませんでした。

これによって、どれだけ人は無意識に体を動かしている(または意識がさまよっている)かが判ります。やればやるほど、習慣を断ち切ることが困難になります。なので、今回3分の1のクリニック参加者たちが、50ヤードでのストローク数を数えるのに、3回泳ぐ必要があったのは不思議ではないのです。そして、意識を習慣化するトレーニングでも、最も高いストローク技術を習得する時と同じように、自己鍛錬と忍耐が必要なのです。

ドリルによる意識の向上
この連載の最初の投稿、 ストロークドリル入門 で、私はドリルを「技術や効率性を改善するための練習」と説明しました。しかし、適切に作られ、指導され、練習されているドリルも同じように(長期的な改善や満足度においてはそれ以上に)、意識のトレーニングにおいて最も重要なツールです。

そのため、トータルイマージョンの自己トレーニングツールや、レッスン、ワークショップでは、効率的なドリル練習において3つの原理に重点を置いているのです。

意識を高める3つの方法

  1. 長さではなく、本数を増やす:私達は、ほとんどのドリルを6〜8秒間(または6〜8m)続けることを強く推奨しています。効果的な動作を身体に覚え込ませる確率を高めるだけでなく、短い距離での繰り返しは集中力を高めます。意識を高める練習は、質の高い動作の練習と同様に重要で、長時間集中力を保つために必要な精神の鍛錬と持久力、また、さらに複雑な技術の習得へと導きます。
  2. 1つのことに意識を集中させる:ほとんどのTIドリルでは、3〜5つの明確なフォーカルポイントのメニューを提供していますが、反復毎に1つのことだけに集中します。初めはドリルで、その後少しずつストロークに取り入れ、これら3〜5つのフォーカルポイントや感覚は、いずれ1つの統合されたスキルとして溶け込んでいきます。
  3. 動作と意識の評価:各ドリルやストローク全体の 反復練習の最後に(特に新しいスキルを練習している場合)自分の動作と泳いでいる間の意識の一貫性を評価します。

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