初島から熱海までを泳ぐ トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2015年10月10日
 2015年9月27日に、TIスイム初のイベントである「初島熱海横断スイム」を実施しました。静岡県の初島から熱海までの11km余りを泳ぎます。今回は4名のチーム泳と、私竹内のソロ泳を同時に行いました。

○初島熱海横断スイムとは
 初島を起点として熱海までの11km余りを泳ぎます。船とレスキューボードに乗ったライフガードが同伴します。チームメンバーに加えて監督やコースディレクターが乗船して、チーム泳の交代のタイミングを決めます。

○メンバー
 浅川さんと笹原さんは前年の初島熱海横断泳(海人くらぶ主催)に参加しています。笹原さんは今年のロットネスト海峡横断泳にチームで挑戦しています。荻野さんは今年からOWSを始めて、グアムのキャンプにも参加しました。伊東さんはトライアスロンのロング大会(スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195km)で完走経験があります。

今回の横断スイムのメンバーとお手伝いしてくださった方達

○9月27日:事前練習
 今回は監督の大貫さん(海人くらぶ代表、日本人で初めてドーバー海峡を横断)の提案で、事前練習することにしました。まだ暖かいとはいえ水温は25度前後、海の大会に参加している人も1カ月以上のブランクが開いていたので、丁度よい練習になりました。
 大貫さんから直前講習を受けることができて、みなさん満足そうでした。
 なお今回は大潮にぶつかって強烈な向かい潮になることがわかっているので、私と一緒に泳ぐ練習では少しペースを上げてもらいました。水中で手の動きを見ると水の当たる感じが弱かったので、エッジをかけることと手の形を確認することを意識してもらうことにしました。

○9月28日:当日朝〜スタート
 台風の接近や天候が心配されましたが、なんとか小雨程度で済んで助かりました。雨が降る中船で待つのは大変です。ホテルをチェックアウトして、水着に上着を羽織った状態でタクシーに乗り、フェリー乗り場に到着します。
 通常初島までのフェリーは往復切符を買うのですが、今回は特別に片道切符を購入します。ここで「泳がないと帰れない…」といきなりプレッシャーがかかります。誰かが「地獄の片道切符」と話していましたが、「それを言ったらおしまいよ」と言いたくなりました。
 フェリーは25分かけて初島に着きます。初島がなかなか見えてこなかったので、随分遠くに感じました。また最初は静かだった水面が、初島が見えた途端にうねるようになり、モチベーションはどんどん下がっていきました。
 初島に着いてから私と第一泳者の伊東さんを除いて漁船に乗り込みます。私達は船を陸に引き上げる坂道のところからスタートします。こけだらけで足を滑らせながらスタート位置に着き、いよいよスタートです。前回は海人くらぶの方達と一斉にスタートして盛り上がりましたが、今回は二人で静かにスタートしました。
 スタートして1分もしないうちに、強烈なうねりが始まりました。「いきなり何これ?」と思いながらうねりのギアを使い始めました。強烈な向かい潮が始まるまでの1時間で、どこまで先に進めるかが完泳できるかどうかの判断になると言われていて、伊東さんと「スタートダッシュしましょう」と話していたのに、それどころではありません。このうねりは結局1時間近く続きました。

○強烈な向かい潮で前に進まず、再スタートに
 うねりが収まってきたと思って喜んだのもつかの間、こんどは強烈な向かい潮になりました。泳いでいる当人は下が見えないのでわからないのですが、船の上から撮影したビデオを見ると、昨年以上に前に進まない状態になっていました。
 昨年は途中で私が一人で30分程泳いで脱出できたのですが、今年は一人でも泳いでも状況は改善せず、安全を考慮して全員が船に上がって移動することにしました。
 最初はもっと近いところに連れて行ってくれると期待していたのですが、熱海の市街地からどんどん離れていって、結局残り距離が同じで、潮の流れが弱い場所から再スタートすることになりました。

今回の横断スイムのコース(途中は船で移動)

○くらげの海を泳ぐ
 再スタートしてからは、かなり静かな海で泳ぎやすいなと思っていたのですが、ときどき手に軟らかいものが当たって何だろうと考えていたら、そのうち全身が軟らかいものに当たるようになってきました。入水した手を伸ばすと、指の間に軟らかいものがはさまってきます。
 最初は何かわからなかったのですが、そのうちくらげだとわかりました。くらげが水面から30cmぐらいのところまでびっしりと埋まっていて、その中を泳いでいるのです。幸いにも刺すタイプではなかったのですが、ありえない感覚で悲鳴を上げながら泳ぎました。
 このときの接触が原因で、からだがアレルギー反応を示して全身がかゆくなったのは泳ぎ終わって半日経ってからです。
 このくらげの海は後半の半分以上の行程で存在して、気持ち悪さを感じながら泳ぎました。

○ついに全員でゴール
 熱海のサンビーチの防波堤が見えてきました、「やっとここまで来たか」と思ったときに、いきなり水温が下がって冷たくなりました。雨の日は海岸に近くなるほど水温が下がるそうで、おそらく2、3度は違ったと思います。サンフランシスコの16度の海で鍛えていますが、4時間23〜24度の海で泳いでいたら20度の水は冷たいと感じます。
 残り300mは全員で泳いでゴールしました。昨年は全員ゴールできなかったので、今年は全員でゴールできて本当によかったと思いました。

全員でゴール

伊東さん 「経験したことのない大きなうねりに翻弄されましたが、みなさんの期待に応えるべく頑張りました。くらげの海はすごかったですね。」
浅川さん 「うねりで波酔いしましたが、その後は落ち着いて泳ぐことができました。昨年よりもスピードアップすることもできて、充実した横断スイムでした。」
荻野さん 「みなさんがうねりに翻弄される姿を見て最初は動揺しましたが、回を重ねるごとに自分の泳ぎを取り戻すことができました。後半は余裕が出てきて一緒に泳がせてもらいました。」
笹原さん 「前回は心身共に参りましたが、今回は気持ち良く泳ぐことができました。途中苦しいところもありましたが、自分の泳ぎを取り戻すことができました。」

 自分の泳ぎを試す究極の場が、初島熱海横断スイムです。来年が最後となる予定なので、みなさんぜひご参加ください。

 ©Easy Swimming Corporation