Swim Like Shinji:10kmを100分で泳ぐ トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2015年8月10日
実際に泳いだコース
○Bridge to Bridge 10 km Swim
Water World Swimが主催するイベント「Bridge to Bridge 10km」に参加した。

これはサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジからベイブリッジまでの約10kmを泳ぐもので、レースではなくタイムや順位のつかないFun Swimとして位置づけられている。サンフランシスコ湾では長距離のスイムとなるので、秋に開催されるレース形式の同種イベントや、来年のドーバー海峡横断に挑戦する人達、さらにアルカトラズスイムを複数回経験している熟練者達20名弱が参加した。中には12歳と10歳ぐらいの小さな姉妹が参加していて、「本当にできるの?」と疑問に思ったが、アルカトラズスイムを11回と8回経験していると聞いて恐れ入った。

ゴールデンゲートブリッジはサンフランシスコの北側に位置し、太平洋の入り口に近い。従って上げ潮のときには西から東側にあるベイブリッジまでは強烈な潮の流れが発生する。通常であれば3時間半かかる10kmのスイムを、この潮の流れを使って2時間弱で泳ぎ切る。

○前半4分の1:アルカトラズを目指す
船でゴールデンゲートブリッジまで行き、そこからスタートするのであるが、下から見上げるブリッジのすごさに圧倒された。23年ベイエリアに住んでいるが下から見るのは初めてであった。

ブリッジからそのまま海岸沿いには泳げない。ゴールデンゲートパーク北側に、巻き込む流れがあり前に進めなくなるのである。このため前半4分の1はアルカトラズを目指して泳ぐ。最初は船の往来に伴う大きなうねりがあり苦労したが、エッジをかけることで安定して前に進むことができた。

○中盤まで:トランスアメリカビルを目指す
アルカトラズに随分近づいたけど、このまま行っていいのかと思っていたら、先頭集団がコーチのボートに停められていた。私もその集団に追いついたとき、「これから方向を変える。トランスアメリカビル(角錐型のビル)を目指せ」と言われた。本来はその手前でアクアティックパークに100ヤード近くまで接近しなければならなかったのだが、実際には潮の流れで離れてしまったようだ。

フェリーの往来もあり、ここまでが最もコンディションが悪かった。大きなうねりが四方八方から押し寄せる感じで、ロットネストの悪夢を思い出した。しかし当時と今では練習量も経験も異なる。スイッチのタイミングをずらしてテンポを上げると共に、入水の加速を上げることでうねりに強いモードに変えて泳いだ。

○中盤〜4分の3まで:ピア沿いに平行移動
当初はアクアティックパークに近い桟橋まで接近してからピア沿いに泳ぐはずだったが、近づいた番号を見たら39だった。ピア39は観光名所として有名で、野生のアザラシが多数生息する。

泳ぎながらピアの壁を見ると、自分が前に平行移動しているのがよくわかる。何もしなくても1秒で自分の身長は動いているようである。あまりにも気分が良く、見物している人に思わず手を振ってしまった。自分の頭の中ではピア39は3分の2まで達しており、このままで行けば楽勝と思っていた。

勝手に前に進むので、スイッチのタイミングを変えてテンポを落とし、水中の軌跡を維持しながらラクに手が動くように調整した。

○後半4分の1:流れが強く最もきつい
ピア39のときにすでにベイブリッジの第1タワーは見えており、もうすぐだと思っていた。ところが残り4分の1になってからが、なかなか近づいてこない。ついにはブイが見えたが、サイティングするたびに右側に移動している(=自分が左に流されている)。以下のような段階で方向を修正した。

1.右側の入水場所を5cm外側にする→効き目なし
2.右手の伸ばす方向を10cm外側にしてエッジをかける→効き目なし
3.左手の入水場所を中央より右側にして、ブイをクロスするように入水する→やっと効き目出る

この時点で目標物もブイから50m右にある建物に修正し、なんとかグループの一番右側で泳ぐことができた。他の人達はかなり外側に流されたので、結果として私が先頭集団に再び追いつくことができた。

100分余りでゴール。ゴールの目印は船上にあるブイで、船にタッチしてゴールというのが変わっていた。

○寒さ、疲れ、給水
水温は華氏62度(摂氏16.7度)で、この時期としては普通である。3月末より毎週1回SF湾で泳いでいた成果が出て、後半少し震えた程度で寒いと感じることはなかった。摂氏12度のときは入水時に全身を刺すような痛みが発生したが、今回船から飛び込んでも何ともなかった。

また前日ホテルにチェックインしてから、水着(ラッシュガードなし)で軽く泳いだのが良かった。水温は65度近かったが、うねりも適度あり、潮の流れは相変わらず速かったのでよい予行演習になった。

疲れについては左手の手首の感覚が薄くなっていた。入水時に手を緊張させすぎているようで、ビデオを見てもそれがわかる。今週から修正する。また今回100分を泳いだが、80分ぐらいから疲れが顕著になっていた。普段の練習で80分ぐらいしか泳いでないことが原因であり、5時間泳ぐ初島熱海を考えると、練習時間を延ばすか、1日2回練習する必要がある。

給水については今回水筒ブイを持参して泳いだ。水筒として吸い込みタイプのソフトフラスクを用意し、水中での給水を試みようとしたが、結局給水休みすることなくゴールしてしまった。普段より素早い給水ができるように練習する必要がある。

○100m世界記録を上回るスピード
平均速度は100mあたり1分3秒で、非常に速かった。速度の変化を見ると、100mの世界記録である46秒91を上回るスピードで泳いでいるときもあり、全体として普段の4割速い速度であった。

泳いでいるときはそれほど速いとは実感しなかったが、中盤で振り返って霧のかかったゴールデンゲートブリッジが見えて、もうここまで来たのかと思った。

以下がロンドン五輪10kmマラソンスイムのタイムである。私は彼らより速かったことになる。

Oussama MELLOULI TUN 1:49:55.1
Thomas LURZ GER 1:49:58.5
Richard WEINBERGER CAN 1:50:00.3

○経験値が上がった今回のスイム
低温、非常に強い潮の流れ、船が通る度に発生する大きく複雑なうねり、刻々と変わる目標物など、オープンウォータースイムで発生する全てのことが一度に体験できるという、非常にお得なスイムであった。

これからアルカトラズスイム(去年勘違いして申し込んだ分)やアルカトラズ往復、さらに初島熱海を控えているので、さらに精進して自分の泳ぎを確立する。

スイム後の気分:10(とても満足)

スイム終了後の帰りの船から(ベイブリッジ)
ゴール後にStuart McDaugal TIコーチと

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