競泳選手の再教育 TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2015年5月11日
今回は、シカゴブルードルフィン スイムスクールのヘッドコーチでもある、ジョン・フィズパトリックTIヘッドコーチによる投稿です。

私は小さい頃から泳いでいましたが、本当にスイミングを理解し始めたのは、2000年の秋に人からトータルイマージョンの本「Total Immersion: The Revolutionary Way to Swim Better, Faster, and Easier(より楽に速く泳ぐ革命的な方法)」を勧められて読んだ時からだと思います。

この本を読んだことがきっかけで、私はTIコーチになる道を歩むことになりました。私が学んだTIの楽に泳ぐ方法は、全ての人が習うべきものだと思いました。

私が生まれ育ったミシガン州バーミングハム市はスイミングの温床のような所でした。私は3歳の時にスイミングのレッスンを始め、まもなくスイムチームに入りました。そして、高校生まで続け、背泳ぎと個人メドレーの選手として力を注いでいました。

私達の練習方法はいつも、長距離のトレーニング、数ヶ月に渡る集中トレーニング、7〜10日かけて練習の強度量を急激に減らしていくというものでした。大会当日にベストの状態で泳げることを期待し、私達は何ヶ月も持続する疲労に耐え、テーパリングをしましたが、結果はおもわしくありませんでした。

私にはほとんど効果がないように感じ、集中トレーニングとテーパリングは意味の無いことのように思えました。高校最後の方では、私はスイミングが嫌いになり、その後数年は、プールに近づくことさえしなくなりました。

ミシガン大学を卒業後の1997年、私は就職でシカゴに引っ越しました。そこで私は、体を鍛えることと社交の目的で、マスターのチームに入りました。週に4〜5回練習に参加し、前を行くスイマーを追いかけ、いつのまにか私は数年前までやっていた練習に戻っていました。

しかし、トレーニングが進むにつれ、肩に痛みが出てきました。 そして最終的には、ストロークする度に激痛が走るようになってしまいました。友人にこのことを話したら、彼はTIの本を読むよう勧めてくれました。それは目からうろこでした。私は直ぐに「Swimming Made Easy(カンタン・スイミング)」を読みました。

その後5ヶ月間、私はペース時計さえ見ませんでした。その代わり、毎週数時間かけて、TIのビデオを見ながらドリルの練習をしました。私は、ドリルを通して新しい感覚と違いに 吸収され、それらを短くて楽な泳ぎに取り入れていきました。

マスターのチームメイトたちは、私がいったい何をしているのかと首をかしげていました。しかし、それによって、私の肩の痛みが消えただけでなく(その後も再発することはありませんでした。)、生まれて始めて自分が水の中をどのように動いているかを意識し始めたのです。

競泳選手にとって、水の中で気持ちよく泳ごうとすることは、痛みを耐えて押し進むことを賛美する精神とは正反対のことです。しかし、私にとってその感覚は、「うまく泳ぐこと」と解釈するべきであると感じました。

厳しいトレーニングを行っていた時の私の自由形のストローク数は、良くて18〜19でした。しかしTIを習得してからは、速さは前と変わらないまま、14〜15に減りました。その上前より楽に泳げるようになったのです。

それから私はマスターチームの練習に再び加わり、大会にも参加しました。そして、練習量を前より30〜40%減らした(チームを指導する時間を作るため)にもかかわらず、前よりもずっと良い成績を収めるようになりました。私の課題は、どのようにTIの技術を従来のインターバルトレーニングに取り入れるかということでした。

経験の少ない人ほど、私がウォームアップに加えたTIドリルに早く馴染みました。経験のあるスイマーは抵抗を感じたようです。そこで私は、「スニーキーTI」を名付けてドリルを用いました。

私は彼らが望むインターバルトレーニングを用いると同時に、フォーカルポイントとストローク数を数えることを加えました。彼らは、いつものトレーニングにしっかりした意識を持って取り組むことを楽しんでくれました。

私が気付かされたのは、従来のトレーニングが通常激しい運動にすぎないのに対して、TIトレーニングは、競泳のフレームワークに取り入れた場合、実際レースに勝つ技術、戦略、ペースの「リハーサル」であるということです。そして、テリーが言うように、トレーニングは実践されたのです。

12年間TIのコーチを続けてきて解ったのは、TIは総体的なシステムだと言うことです。単に技術を習得したスイマーが以前より効率的に泳げるようになるのに対し、私がしたように、時間をかけて全てのプロセスを追求したスイマーは、更なる変化を遂げることができます。

流線型を意識することから始め、全体のストロークの効率性を高め、体に覚え込ませることで、生涯改善の基礎を身につけることができます。

TIのレッスンが、インフルエンザの予防接種のようなもの、つまり、「形式だけの練習」でないことに気付いた時、スイミングの動作が変わるだけでなく、他の課題や目標に対してもTI論を適用し、物事への見方や取り組み方も変わるのです。

私や私が指導している競泳選手は、TIを通して、一般的なトレーニングを個々のニーズに合わせて変える能力を身につけることができ、他のスイマーを追いかけ、競争するのではなく、個人の優先改善点に集中して取り組めるようになります。

私はコーチとして、選手にしっかりした生体力学の基礎を教え、レース時のスピード、カウント数、テンポにおいて、これらの力学をサポートする彼らの生物機能を訓練する努力をしています。

この投稿を読んで、少しでもTIに興味をお持ちになったら(特に、パフォーマンス志向のスイミングがあなたの目標のひとつであるなら)、是非試してみてください。時間をかけて新しい感覚を抱いてください。そして、タイムでではなく、どれだけ気持ちよく泳げているかで、自分の泳ぎを評価してください。スイミングを理解して好きになるだけでなく、長期的に見て、もっと速く泳げるようになります。

 ©Easy Swimming Corporation