美クロのコツコツ:入水と出水角度を同じにする イージー・スイミング・ファウンダー 竹内慎司

 2020年1月10日

美しいクロールを泳ぐために、身につけなければならない技術をご紹介します。
これらの技術は、知ったらすぐにできる「コツ」ではありません。意識をしながらコツコツと練習することで身につけることができます。

手を入水するときの角度を気にする人は多いですね。
水面からの理想的な角度は45度です。
45度で手を入水してから水面と平行に手を伸ばすことで、手の重みを使って手を素早く伸ばすことができます。
同時に水中の手をももの前まで運ぶことで、水中の手の動きが加速して推進力が生まれます。

この45度入水を実現するために大切なことが、手を水上に出すときの角度も45度にするということです。
入水角度と出水角度を同じにすることで、横から見たときの手の動きが左右対称となって、リカバリーが美しく見えるのです。

○45度出水のもう一つのメリット
手が水上に出ると、浮力が失われて重さが水中の10倍になります。
この重さの変化は、からだ全体に対する重心に大きな影響を与えることになります。

例えば体重60kgで手の重さが2kgだとすると、陸上で手の重さはからだ全体に対して2÷60=3.33%を占めることになります。

一方水上で手を出した状態では、からだが浮力を受け続けて軽い一方、手はリアルの重さに変わります。

  • からだの重さ:(60-2)×10%=5.8kg
  • 手の重さ:2kg
  • からだの重さに占める手の割合:2÷5.8=34.5%

これは陸上でいうと、60kgの体重に対して手の重さが約21kgあるということです。
手が20kgもあったら、手を前後に動かすだけでからだも前後に動いてしまいますよね。

このため、手をどのように水上に出すかが非常に重要になります。
理想的な手の出し方は、次の2つを満たすことです。

  • 重心(へそのあたり)より前で手を水上に出す
  • 手を前に送りながら水上に出す

こうすれば手の動きに合わせて、重心を常に前に移動することができます。
この理想的な手の動きが「水面から45度の角度で手を出す」ということなのです。

○45度出水の方法
45度出水をするためには、肘を常に前に動かしながら水上から出す必要があります。
このときに必要な動きは、次の3つです。

  • わきを開く。
  • 肘を内旋する(内側に回す)。
  • 肘を曲げる。

この3つの動きを同時に行いながら、肘を前に運ぶようにすると45度で出水できます。

またこのときに勢いを作ることが大切です。
勢いを作るためには、水中で水を素早く押して水が押し返す反動で手を前に運びます。
これを「水中フィニッシュ」と呼びます。
水中フィニッシュでは、水の反動が得られる正しい向きで、手で水を押すことが大切です。
この感覚を養うために、陸上でゴムを使った練習を行います。
正面から見て水中の手がからだに隠れないように、ゴムを伸ばします。
ゴムを伸ばしきったときに肘をゆるめて「わきを開く」「肘を内旋する」「肘を曲げる」の3つを行いながら、手がリカバリーの軌跡を描くように動かします。

十分な水の反動を得ながら45度で手を水上に出せば、入水位置まではほとんど手を運ぶ意識をもたずに「わきを伸ばす」だけでリカバリーすることができます。こうすることで手と水面との距離を最小にしながら、肘の角度を直角に保って正しい入水角度(45度)を作ることができます。