ためらいながら海に入ると、TIとウェットスーツのコンビが私を魚に変えて、驚くべき速さで水中を切るように進むことができたので、私の不安は一気に消し飛びました。水泳で引き出されたポジティブなエネルギーでバイクとランも突っ走りました。 やった!!!これまでとても手の届かなかった、憧れの「アイアンマン・トライアスリート」と自分を呼べるようになったのはトータルイマージョンのお陰です。

3年前、公認会計士の肩書きを離れて、妻の仕事のために北カリフォルニアのベイエリアからドイツのボンに移り住み、11歳と1歳の子供のために主夫になりました。言葉も文化もわからない土地で、自由な時間が増えた好機を利用して、20年以上のデスク・ワークで萎えた体をシェイプアップする決意をしました。

自転車を引っ張り出して、毎日1時間ほど乗るようになりました。その後フランスに旅行して、アルプ・ドゥエズとガリビエールを含むトゥール・ド・フランスの最も険しい坂のいくつかを自転車で走りました。これらの険しいピークを制覇してアイアンマンの気分になった私は、本物のアイアンマン(長距離トライアスロン)を試そうと決心しました。20年以上前にマラソン選手であったことを支えに、25メートルプールでは息も絶え絶えに泳ぐことは考えないようにしました。

勢いづいた私は、家族に2.4マイル(3800メートル)のオープン・ウォーター・スイムを皮切りに、112マイルのバイク、そしてフルマラソンの計画を打ち明けました。たいていのことは支持してくれる妻もこの時ばかりは、もう少し現実的な目標に変えるように説得してきました。子供たちは冗談だと思い、隣人に至ってはただ笑うばかりでした。

ところで大の苦手の水泳は?数時間のインターネット・サーチでトータル・イマージョンを発見して、旅行を兼ねてイギリスでの週末ワークショップに参加しました。

ヘッド・コーチのケビン・ミラーリックは愉快で知識にあふれ、ワークショップを通じて私の野心が手の届かないものではないという漠然とした思いを抱きました。教室でプログラムの説明を受けた後プールに向かい「典型的な苦闘するスイマー」であると診断されました。ドリルで効率を積み重ね、プールで多くの時間を費やし、細かい点に留意して練習するプログラムが、私を夢に向かってガイドしてくれました。

地元のプールで大会の10ヶ月前にトレーニングを始めて、その2ヵ月後に短距離トライアスロンに出場できるまでになりました。600メートル水泳では、はじめにスピードを出しすぎて残り400メートルという所でガス欠になり、一番後でゴールしました。それでも、水泳の自己記録を25倍引き伸ばしたことには変わりありません。

レース後のある日、12歳の娘と彼女の友達を連れてプールに赴きました。私の泳ぎを観察した競泳選手の彼女は、家に帰って母親に「パパが海でおぼれるかもしれない」不安を報告しました。それでも私を止めることは出来ません。

ベイエリアを訪れた際に、TIのウェブサイトで調べてインストラクターのダリル・ベイツにコーチを頼みました。大きな違いをもたらしたいくつかのアドバイスの中で特に重要だったものは、その1:“静かなキック”その2:“直線ラインに沿うように腕を伸ばす”これらのアドバイスと、他のフォーカル・ポイントと共にはっきりとした指針を持って練習を再開しました。

6ヶ月間TIのプログラムの練習を重ねてしっかりとした自信をつけ、フォーカルポイントに集中しながら2マイル以上休むことなく泳げるようになりました。こうして、アイアンマンのスイムで救助隊に水から引き出されることなくレースを泳ぎきる自分を実際に思い描けるようになりました。

数ヶ月前に出産のためにベイエリアに戻った際、ダリルにコンタクトを取って今度はエンドレス・プールで指導してもらい、ウエットスーツでの練習も試みました。技術と自信をさらに向上させて大会に臨みます。

大会の日を目前に、私の一番の不安は海で泳ぐことでした。フランスはニースのアイアンマン競技会場である地中海で、大会数日前に泳ぎました。最初はウェットスーツを着用して泳ぐのに違和感がありましたが、練習するうちにテクニックに自信を持てるようになりました。今回は何とか一番後は避けたいと思いました。プールでなら大会の距離を90分ほどで泳ぐ自信はありましたが、何と言っても海は予想がつきにくくコンディションによっては大幅に時間がとられるのはやむを得ません。

大会の日は「溺れない」「パニックに陥らない」という2つの控えめな目標と、「大会を楽しむ!」という覇気に満ちた目標を立てて、一番遅いスイマー達の列に並びました。スタート・ガンが鳴り響き、ためらいながら海に入ると、TIとウェットスーツのコンビが私を魚に変えて、驚くべき速さで水中を切るように進み、私の不安は一気に消し飛びました。2.4マイルを1時間19分という驚くべきタイムで泳いで、心の余裕と共にその日1日中楽しむことが出来ました。水泳で引き出されたポジティブなエネルギーで、完走する自信のあった2種目であるバイクとランも突っ走りました。13時間31分後、初のアイアンマンを完走しました。ほんの1年前には25メートルも満足に泳げなかった自分が、余裕を持って海を数マイル泳ぎ切ることが出来ること自体、いまだに信じられません。

レース後、また普段のドリル練習に戻りました。妻は私の「中年の危機」が早く終わることを願い、私はさらにアイアンマンとして力をつける自分の将来を思い描いています。スピードの虜ではなく、より上手に泳げるようになるための“速いトラック”を走っています。

トム・グリンは現在、妻と3人の子供達とサンフランシスコ近郊に住んでいます。今は公認会計士の仕事を臨時休業して主夫をしています。次の目標は、2010年ごろに予定されているハワイのアイアンマン世界チャンピオンシップの出場資格の獲得です。
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