ラクに泳ぐためには水の抵抗を減らすことがとても大切です。今回は水の抵抗を減らす3原則のうちの3つめ、「側面で泳ぐ」について考えてみましょう。おへそが常に左右のどちらかを向いているように泳げば、抵抗を減らすことができるだけでなく、体幹で泳ぐためのエネルギーを生み出すことができます。
●背浮きよりもスィートスポットが進む理由
↑バランスのとれた背浮き
↑スィートスポット
↑ジッパースイッチ

TIのドリルを試した方は、すでに「バランスのとれた背浮き」から「スィートスポット」に姿勢を変えると、速く進むことに気づいたのでないでしょうか。バランスのとれた背浮きとは右上の写真の状態です。一方スィートスポットは右中の写真の状態です。真上を見たまま、頭頂部からお尻にかけて1本の軸があると想定してその軸を中心に反時計回りに体を回転させています。右中の写真では、右肩から右手にかけて水面上に出ています。

背浮きよりスィートスポットが進むのは、「水の抵抗は、水中部分にある物体の断面積に比例する」ためです。体の右側の部分が水面上に出たことで水中部分にある体の断面積が減少した結果、水の抵抗が減ることになります。なお厳密に言えば、水面上に出た体の部分だけ浮力が減少するため体は若干沈みます。右の写真でもスィートスポットの姿勢は少し沈んでいますね。このため最初に水面上に出した体の右側の部分は、少し沈んだ状態で均衡することになります。

このように正面からみるとできるだけ「体を立てた状態」の方がよいという考え方は、貨物船とヨットを比較するとわかりやすいでしょう。貨物船の断面積は横に平べったくなっていて、重い荷物をがっしり受け止めているように見えます。一方ヨットの断面積はくさび形になっていて、水中の断面積をできるだけ小さくしているだけでなく、「左右に揺れながら」前に進むようになっています。クロールを泳ぐとき、貨物船とヨット、どちらのように泳ぎたいですか?もちろんヨットですね。

そこでヨットの進み方を参考にしてクロールの姿勢を考えると、右下のジッパースイッチの写真のように、

  • 水面に対して体を垂直にする(縦にする)

  • 頭に対して体は横を向く(おへそが横を向く)

  • 体の向きを切り替える

ことで、水の抵抗を減らして泳ぐことができるようになります。縦になりながら横を向く、これが抵抗を減らして進むために大切です。

●いわゆる「ローリング」について

背骨(または頭頂部からお尻までの直線)を軸として体を回転させながら進むことを「ローリング」と呼びます。ローリングは「呼吸がしやすくなる」、「リカバリー(手の返し)がやりやすくなる」、「体が安定する」、「胴体を使って進む基礎となる」などと考えられています。ローリングをすることは上記の3項目全てが当てはまることになるので、水の抵抗を減らすにはローリングをすればよいと考えがちです。

しかしローリングのやり方として、頭を中心に肩を回転させるイメージで回そうとすると、多くの場合「回転のしすぎにより体がねじれる(特に腕を上げたとき)」ことがスイムサロンにおけるスイマー100人以上の観察で明らかになりました。このためTIではローリングを意識しません。ねじれがひどい場合には「ローリングしないように意識する」こともあります。

ねじれがなく、進む技術を磨きたいときには、体の向きを切り替えることについて、肩を回すことよりは、「おへそが左右を向く」意識を持ちます。もともと体幹による推進力の多くの部分は腰の回転から発生しており、肩の回転ではありません。これは野球でピッチャーがボールを投げるときに、腕を回す動作より前に腰を回す動作から始まるのに似ています。腰が左右を向く感覚は泳いでいるときにはわかりにくいので、おへその向きに着目しています。

アンダースイッチやジッパースイッチドリルでは、スイッチのタイミングについて感覚がつかめたら、意識をおへその向きに集めます。スイッチした後におへそが逆向きになるように、腰を回すことで伸ばそうとする手をより前に送り出すことができるようになります。

 

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